【完全版】自動運転レベル0〜5を徹底解説!レベル2と3の「決定的な壁」とは?2025.11.14
「テスラのオートパイロットってレベルいくつ?」 「日産のプロパイロット2.0と、スバルのアイサイトXはどう違うの?」 「最近よく聞く『自動運転レベル』って、本当に運転しなくていいの?」
自動車の「自動運転」技術は、まさに日進月歩。しかし、その技術レベルは複雑で、CMやニュースの言葉だけでは「何ができて、何ができないのか」が分かりにくいですよね。
特に「レベル2」と「レベル3」の間には、技術的にも法的にも、とてつもなく大きな「壁」が存在します。
この記事では、自動運転の「レベル0」から「レベル5」までの全階層について、それぞれの定義、具体例、そして「運転の責任は誰にあるのか」という最重要ポイントを、どこよりも詳しく、長文で徹底解説します。
なぜ「レベル分け」が必要?世界共通のモノサシ「SAE」とは
まず、私たちが使っている「レベル」という言葉は、米国の非営利団体である**SAE(Society of Automotive Engineers)**が定めた「J3016」という国際的な標準規格に基づいています。
昔はメーカー各社が独自の呼称(例:「運転支援システム」)を使っていたため、消費者は技術の違いを比較できませんでした。そこでSAEが「自動化の度合い」をレベル0から5までの6段階に定義し、これが世界共通の「モノサシ」となったのです。
このレベル分けの最大のポイントは、「運転の主体(運転操作の責任)」が『人』なのか、『システム(車)』なのか、そして**「システムが作動する条件」**によって明確に区別されている点です。
最大の分岐点!「レベル2(運転支援)」と「レベル3(自動運転)」の決定的な違い
多くの人が混同するのが、このレベル2とレベル3です。結論から言うと、この2つの間には「天と地」ほどの差があります。
レベル0〜2は「運転支援システム(ADAS)」
レベル0、1、2は、法的にはすべて「運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)」に分類されます。
- 運転の主体(責任): 常に「人」(ドライバー)
- システムの役割: あくまでドライバーの操作を補助・支援する「アシスタント」
システムがどれだけ高度であっても、事故が起きた場合の法的責任は、すべてドライバーが負います。したがって、ドライバーは常に周囲の状況を監視し、いつでも運転操作に戻れるよう準備しておかなければなりません(=前方注視義務がある)。
レベル3〜5は正真正銘の「自動運転システム」
レベル3、4、5は、初めて「自動運転(Automated Driving System)」と呼ばれます。
- 運転の主体(責任): 「システム」(特定の条件下において)
- システムの役割: ドライバーに代わって運転操作のすべてを実行する「ドライバー」
ここが最大のポイントです。レベル3以上では、システムが作動している特定の条件下において、運転の責任が「人」から「システム」へと移譲されます。事故が起きた場合、その責任は(条件を満たしていれば)システム側、つまり自動車メーカーが負うことになります。
【詳細解説】自動運転レベル0から5までの全貌
それでは、各レベルで「何ができて、責任は誰にあるのか」を具体的に見ていきましょう。
レベル0:運転自動化なし
運転の自動化が一切ない状態です。ドライバーが「アクセル・ブレーキ」と「ハンドル」のすべてを操作します。従来のほとんどの車がこれに該当します。(※衝突被害軽減ブレーキのような瞬間的な介入は、SAEの定義ではレベル0に含まれます)
レベル1:運転支援
システムが「アクセル・ブレーキ(縦の動き)」または「ハンドル(横の動き)」のどちらか一方を支援します。両方を同時には行いません。
- 具体例:
- 前の車に追従する「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」
- 車線の中央を走るようハンドルを補助する「レーンキープアシスト(LKA)」
- 責任: 人。ドライバーは常にハンドルを握り、前方を監視する必要があります。
レベル2:部分的な運転自動化
システムが「アクセル・ブレーキ(縦の動き)」かつ「ハンドル(横の動き)」の両方を同時に支援します。
- 具体例:
- 高速道路で、車線の維持と車間距離の維持を同時に行ってくれる機能。
- 最近話題の「ハンズオフ(手放し運転)」機能(日産「プロパイロット2.0」やスバル「アイサイトX」など)も、法的にはレベル2に分類されます。
- 責任: 人。たとえ「ハンズオフ」が可能でも、それは「ハンドルから手を放すこと」が許されているだけで、「前方から目を離すこと」は許されていません。ドライバーは常に周囲を監視する義務があり、緊急時には即座に運転を引き継ぐ必要があります。
レベル3:条件付自動運転化
ここからが「自動運転」です。特定の条件下においてのみ、運転の主体が「人」から「システム」に切り替わります。
- 特定の条件とは: 例えば「高速道路」「時速50km以下の渋滞時」「天候が晴れ」など、非常に限定された条件です。
- 具体例: ホンダが2021年に市販化した「Honda SENSING Elite」(レジェンドに搭載)。
- できること: システム作動中、ドライバーは法的に「前方注視義務」から解放されます。カーナビでのテレビ視聴や、スマートフォンの操作(※)が可能になります。(※各国の法律によります)
- 責任: 作動中はシステム。ただし、システムが「もう限界です(例:渋滞が解消した)」と判断した場合、ドライバーに運転交代を要求する「テイクオーバー要求」を発します。ドライバーはこれに即座に応じ、運転に戻らなければなりません。
レベル4:特定条件下における完全自動運転化
レベル3と同じく「条件付き」ですが、その範囲がより実用的になります。最大のポイントは、ドライバーが一切関与しなくてもよいことです。
- 特定の条件(ODD)とは: 「ODD(Operational Design Domain:運行設計領域)」と呼ばれる、決められたエリア・天候・時間帯などでのみ作動します。
- レベル3との違い: レベル3にあった「テイクオーバー要求」がありません。システムはODD内であれば、緊急時も含めてすべて自動で対処(例:安全な場所に停車)します。
- 具体例:
- 特定のルートを走る「自動運転バス」
- 工場や空港の敷地内を走る「無人搬送車」
- 開発中の「ロボタクシー」
- 責任: ODD内では完全にシステム。そのため、このレベルの車には、運転席やハンドルが不要になる設計も可能です。
レベル5:完全自動運転化
自動運転の最終形態です。「ODD(運行設計領域)」の制限がなく、いつでも、どこでも、どんな天候でも、システムが全ての運転を行います。
- 具体例: SF映画に出てくるような「目的地を告げるだけで連れて行ってくれる車」。
- 責任: 常にシステム。ハンドルやアクセルペダル自体が存在しないため、人間は「乗客」になるだけです。物流、交通弱者の移動、都市の設計まで、社会全体を根本から変える技術とされています。
自動運転が普及するための「3つの大きな壁」
現在、技術的にはレベル3が市販化され、レベル4の実証実験が世界中で行われています。しかし、本格的な普及にはまだ大きな「壁」があります。
① 技術の壁(悪天候・イレギュラーへの対応)
現在のセンサー(カメラ、レーダー、LiDAR)は、大雨、雪、霧などの悪天候に弱いという課題があります。また、工事中の道路、飛び出してくる動物、複雑な交差点など、予測困難な「イレギュラー」な事態に100%対応するAIの開発も難航しています。
② 法律と保険の壁(事故時の責任)
特にレベル3以上で事故が起きた場合、「本当にシステムが作動条件内だったのか?」「ドライバーはテイクオーバー要求に適切に応じたのか?」を証明する必要があります。そのため、のデータ記録装置(ドライブレコーダーの高度なもの)の搭載や、新しい保険制度の設計が急務です。
③ 社会受容性の壁(コストと倫理)
高度な自動運転システムは、非常に高価です。一般車に普及するまでには、大幅なコストダウンが必要です。また、「事故が避けられない時、歩行者を守るか、乗員を守るか」といった倫理的な問題(トロッコ問題)について、社会全体での合意形成も必要とされています。
まとめ:自動運転レベルの違いは「運転の責任が誰にあるか」で見分けよう
自動車の自動運転レベルについて、ご理解いただけたでしょうか。
- レベル0〜2:『運転支援』
- 責任は「人」。システムはあくまでアシスタント。
- レベル3〜5:『自動運転』
- 責任は「システム」(特定の条件下で)。システムがドライバーの役割を担う。
現在市販されている車のほとんどは、たとえ「ハンズオフ」ができても「レベル2」です。運転の責任は常にドライバーにあることを忘れず、技術を過信せず、安全運転を心がけることが最も重要です。
今後、レベル3やレベル4の技術が普及すれば、私たちの移動は劇的に安全で快適なものになるでしょう。その未来に期待しつつ、今の技術と正しく付き合っていきましょう。




